2026/03/03 03:19

プレイバック 〜あの作品を振り返って#5 〜

過去の自作を一つずつ紐解く振り返りシリーズ。 

第5回目は、今から23年前、2003年に制作した「10インチトート」です。 

このバスケットには、今でも鮮明に覚えている「憧れの原風景」がありました。


10” tote (2003年)

base: cherry

rim: reed

stave, weaver: cane

knob: ivory double shell

handle: cherry, bonnet style


■ 教室で出会った、圧倒的な存在感

当時、使い勝手の良い「オペラ」を作り終えたばかりだった私。 

次はもう少し大きなバスケットが欲しいな……と考えていた頃、

バスケットのクラスで10インチトートを颯爽と持っていた、ある方の姿がとても印象的でした。

ジーンズのカジュアルな装いに合わせて、10インチのボリュームとウッドハンドルの佇まいが、

言葉にできないほどカッコよく、圧倒的な存在感を放っていました。 

「私も、あんな風にバスケットを持ちこなしたい!」 

その時の衝撃的なときめきが、この制作のすべての始まりでした。


■ 「ふっくら」が生む、トートの美学

最近の私が作るバスケットは、縦軸も横糸も細く、繊細に編み上げるスタイルが主流かもしれません。 

けれど当時の私は、大きめのトートのフォルムには

**「少し太めの縦軸と横糸が生み出す、ふっくらとした編み目」**がふさわしいと考えていました。

編み目の一つひとつに厚みがあるからこそ生まれる、ぷっくりとした優しい曲線。 

この絶妙なボリューム感が、ジーパンなどのラフなスタイルに合わせても負けない、

力強くも愛らしい「正解」のバランスを作ってくれたのだと、20年経った今でも確信しています。


■ 一点豪華主義と、プロに救われた経験

ハンドルは、憧れの象徴だった四角いボネット型のウッドハンドル。 

最近はなかなかこれぐらい上質なハンドルに当たることが少なくなりましたが、

当時はバスケットの大きさに負けない厚みがあり、太くしっかりした幅のハンドルが入手できました。


そして、蓋のないオープンタイプだからこそ、視線が集まる留め金には奮発して「象牙のダブルシェル」を。

実はこれ、バスケットの材料費よりも高価だったんです(笑)。 

表面に象牙特有の格子模様が入った美しさ、細部まで丁寧に彫られた丸いフォルム。

まさに私なりの一点豪華主義でした。

ところが、完成後にシェルの留めが甘く、ハンドルを動かすたびに「くるくる」と回ってしまう問題が発生。

ある日、材料屋さんのオーナーに相談したところ、「ちょっと貸してごらん」とその場でしっかり固定するように直してくれました。プロの技術を目の当たりにし、「もっと早く相談すればよかった!」と感動したのも良い思い出です。


■ 23年という月日が磨き上げたもの

制作から23年。 2003年に生まれた私の第8作目のバスケットは、今や見事な「飴色」へと育ちました。 

ハンドルも編み目も、新品の時には出せなかった、時間だけが作れる深い艶を纏っています。

底板のサインの周りには傷もあり、使い込んできた歴史が刻まれています。

ただ、今改めて眺めると、当時の自分が一生懸命に削って、煮て、型作りをした「リード(籐)のリム」の白さが、

今の飴色のボディには少し目立つようになりました。 

「今なら、この落ち着いた色味に合わせて、リムをチェリーに作り替えたい」 そんな風に思えるのも、

20年を共に歩んできたからこその、新しい楽しみかもしれません。


あの時、教室で見かけた「カッコよさ」に憧れて、自分の信じる「ふっくら感」を形にした2003年。 

未熟だった部分も、背伸びをしたこだわりも、すべてが今の私へと続く大切な道のりでした。

次はリムをチェリーに仕立て直して、また次の20年を一緒に歩んでいこうと思います。


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