2025/06/05 23:56
〜あの作品を振り帰って #3 〜
私のナンタケットバスケット歴がそろそろ四半世紀に近づいてきました。
製作中の忘れられない思い出の中で、輝かしい出来事もあれば、必ずしもいいことばかりではなかったり…。
少し立ち止まって振り返り、当時の記憶と作品への思いを書き留める備忘録として、作品をの数々をご紹介します。
懐かしい作品に想いを馳せながら、ここから新作のアイデアが生まれるヒントにになるかなという淡い期待もあったりします。
6” Oval Purse (2003年)
base: cherry
rim: reed
leather latch, bone peg
carving: bone hampback whale
stave, weaver: cane
このバスケットは、私が初めて制作した楕円形の蓋付きバスケットです。
底板、蓋、ハンドルにはチェリー材を使用し、バスケットの枠にはリードを用いています。
ハンドルの留め金にはボーンのノブ、飾りには、ボーン製のハンプバックホエールを選びました。
形がちょうど楕円形のバスケットによく似合うと感じたことに加えて、
ナンタケット島にゆかりのあるクジラを作品に取り入れたいという思いがあり、このモチーフを選びました。
このバスケットは、私が結婚式を行なったマウイ島へ持っていくために作ったもので、特に思い入れのある一作です。
現地でバスケットを持って歩いていたとき、「素敵なバスケットですね」と声をかけられたことがとても嬉しく、今でも鮮明に記憶に残っています。
20年前に作ったこの作品に使われているハンドルは、太くしっかりとした作りです。
当時は、ハンドルの種類が今ほど豊富ではなく、
主に丸い「ラウンド」か、緩やかなカーブを描いた四角い「ボネット」スタイルの二種類が一般的でした。
私はバスケットの形に合わせてハンドルの形も選ぶことを大切にしており、
丸型にはラウンド、楕円形にはボネットを使い分けていました。
例外として、高さのある丸型バスケットにはボネットを用いることもありました。
このバスケットには、楕円形に合わせてボネットスタイルのチェリーハンドルを取り付けています。
当時のシンプルでありながら力強いデザインは、今もなお独特の存在感を放っています。
また、蓋の前の留め金に使った紐は、バスケットの枠に穴をあけて通すという方法を試しており、これもこの時期自分で工夫したひとつです。
現在は、より安定感と耐久性を求めて、ボトムの編み目に紐を通す方法を採用しています。
枠にはリード材を使用しており、当時は自ら幅を測って切り出し、削り、
煮て柔らかくしてから、型につけて整形するという手作業で仕上げていました。
リードは20年以上が経っても白さが残っており、今振り返ると経年変化による味わいが出にくい点が気になっています。
その後は、蓋やハンドルの材と調和を図るために、枠にも同じ材を使用したり、
ナンタケットバスケットの伝統的な素材であるオークを取り入れたりと、より全体の統一感を意識するようになりました。
この時期は、サインの形式もまだ定まっておらず、このバスケットの裏にはイニシャルを入れています。
蓋の形も、制作初期らしくややぷっくりとした丸みのあるフォルムで、
ざっくりとした編み目と相まって、どこかカントリー調の、やさしくあたたかみのある印象を与えてくれます。
このバスケットは2003年に制作したもので、20年が経った今では、
チェリー材やボーンの装飾部分が時間とともに深みを増し、美しい飴色へと変化しています。
特にチェリー材は、光や空気に触れることで徐々に赤みを帯び、艶やかに育っていく特徴があり、
そうした経年変化もナンタケットバスケットの大きな魅力のひとつです。
初めて楕円形の蓋付きに挑戦した作品。
私にとってこの5作目の作品は、ただ技術を積み重ねたというだけではなく、
人生の大切な節目と重なる特別な思い出が込められたバスケットでもあります。
時を経て色づき、手に馴染んでいく姿に、ものづくりの奥深さと喜びをあらためて実感しています。
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