2025/03/29 01:10


ナンタケットバスケットは、意外にもリタイア後の趣味として始める人が多いそうです。

私が模様編みのバスケットを習ったクラスの先生ご夫婦も、60歳からナンタケットバスケットを作り始めたそうです。

私が出会った時、先生ご夫婦はすでに80歳を迎えていましたが、

常に新しいデザインを考え、大きな刺激を受けたことを今でも鮮明に覚えています。


先生ご夫婦の作品は、ナンタケットバスケットの伝統的な型や作りを忠実に守りながら、

奥さまが考案された螺旋や稲妻のようなジグザク模様が特徴的でした。

数学の教師だった奥さまは、独創的なデザインを生み出し、

一方で木工が得意なご主人は、そのデザインにふさわしい頑丈でしっかりとした木のハンドルを施し、

どれもユニークで魅力的な作品ばかりでした。

ご夫婦お二人の手による作品は、まさに見事な協力作であり、私もその魅力に圧倒されていました。

さらに、スミソニアン美術館に作品が収蔵されたことや、

クリントン大統領時代のホワイトハウスのクリスマスツリーのオーナメントとして飾られたことなど、

先生ご夫婦から直接写真を見せてもらいながら話を聞くのが、クラスに通う楽しみのひとつでした。


先生の「模様編みのバスケット」は、模様が斜めのパターンや編み目が斜めに交差するパターンが多く、

これらを「Twill pattern」と呼んでいました。

私も先生のTwillパターンの影響を受けて、模様編みのミニバスケット5個制作しました。

このTwillシリーズは、2016年に開催されたナンタケットバスケットミュージアムの展示会に出品し、

ミュージアムに寄贈された先生の作品と一緒に飾られるという光栄な機会を得ることができ、心から嬉しかったです。


私が自分でバスケット作りを始めてからは、時折近況をメールでお伝えしていたのですが、

先生ご夫婦がお引越しされてからは、連絡が途絶えてしまいました。

奥様は10年前に他界し、彼らのお子さんが私と同じ街に住んでいることは、風の便りで聞いていました。


そんな中、一昨年の年末にご近所の方からお手紙をいただき、驚いたことがありました。

私の街で開催された最高齢者の表彰式で、100歳の男性が表彰され、

なんと、その男性が、かつて私が習ったあの模様編みバスケットのご主人だと知りました。

私は表彰式のお祝いに駆けつけ、20年ぶりに再会できたことはまさに奇跡でしたが、

残念ながら、病気のため昔のことを覚えておらず、お話をすることはできませんでした。

それでも、ご夫婦のもとで作ったバスケットを手にしてご挨拶をすると、ずっとバスケットを見つめていました。

きっと、何かを思い出してくれていたのだろうと思います。


少しほろ苦い、切ない思いもありましたが、表彰式で先生と先生の作品に再び出会えたこと、

そしてその場にいた皆さんがバスケットを褒めてくださったことは、誇らしく、嬉しいことでした。

先生の元で作った模様編みバスケットの裏には2005年と彫っています。

その節目を前にして起こった出来事でした。


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